2011年5月26日木曜日

カンボジアの為替・物価は安定:中銀ソッカ総局長に聞く

カンボジア中央銀行(NBC)で広報官も兼務するグオン・ソッカ総局長に最近の為替レート、物価、金利について聞いた。

 ベトナムは脱米ドルを目指したために通貨ドン安とインフレに苦しんでいる。一方のカンボジアはドル化した経済で市場が為替レートを決定。リエルの信任を高めていくためにも対ドルレートの一層の安定が不可欠だ。【鈴木博】

 ■ベトナム・ドンとは対称的にリエル高が続くが

 カンボジアの通貨リエルは堅調で、4月には心理的抵抗線の4,000リエル/米ドルを一時超えて3,900リエル台になるなど、リエル高が続いている。その要因としては基礎的な要因と季節要因がある。

 基礎的要因については、昨年秋の米国の量的緩和以降、米ドルは、対ユーロ、対円だけでなく、カンボジアの主要輸入先国の対中国(人民元)、対タイ(バーツ)でも値下がりが続いている。この状況の中で、カンボジアリエルも買われたと考えている。

 ベトナムは、カンボジアに比べると、為替市場が閉鎖的であり、その点からドンが売られるということもある。また、ベトナムは脱ドル化の途上でもあり、何かあるとドルに戻るということもある。カンボジアの為替市場はオープンであり、原則として市場が為替レートを決定している。

 ■リエル高の季節要因とは

 カンボジアは高度にドル化した経済だが、農村部ではリエルが主流。このため、農産物の収穫期には、コメの買い付けでリエルが必要となるため、リエル高となるのが通例だ。毎年10~4月はリエル高、5~9月はリエル安ということが多い。また、3月末は、税金の支払い期限となるが、税金もリエル建てなので、リエル需要が高まる。さらに、4月中旬のクメール正月の時期も地方部を中心にリエル重要が高まる。これらの季節要因で3月末から4月にかけてリエル高が進んだと考えている。

 ■昨年はリエル安で中銀は為替市場介入を続けたが、レートの目標圏はあるか

 目標圏は設定していない。ただ、カンボジアはドル化経済であり、リエルの信任を少しずつ高めていくためにもリエルの対ドルレートの安定が必要である。そこで、4,000~4,100リエル/米ドルを「気持ちの良いゾーン」として考えている。ここから大きく離れる場合や、動きが速すぎる場合には、中央銀行として為替市場に介入することがある。

 ■ベトナムや中国はインフレ圧力から、総需要抑制政策に舵を切り始めた。カンボジアの現状と政策の見通しは

 カンボジアはドル化したオープンな経済であるので、国際商品の値上がり等海外の動きが直撃する。また、ドル化経済のため、金融政策も限られている。

 ただ、カンボジアの物価上昇率はいまだに年4%以下であり、ベトナムを含む新興国の状況と異なっている。国際石油価格の上昇は気がかりだが、本年1月から石油類の関税を引き下げており、国内ガソリン価格の安定に寄与している。

 また、消費者物価指数の45%を占める食料品価格が上昇していないことも安心材料である。銀行セクターの貸付の伸びも年20~25%と順当な範囲に収まっている。海外からの資金流入も、輸出、直接投資、ODA、海外からの送金等も昨年から比べると大きく伸びているが、経済危機前のレベルに戻った程度であり、心配するレベルではない。

 現時点で中央銀行としては、状況をしっかりとみている段階であり、総需要抑制政策をとる段階ではないと考えている。

 ■金利の動向は

 銀行セクターでは、平均貸付金利はあまり変化していない。ただ、平均であるので、個別のローンの中には貸付金利の低いものも出てきていると考えている。他方、預金金利の低下は明らかである。これは、最近、各銀行が十分な流動性を確保しているためである。

 ■平均貸付金利が15~16%と高い要因は

 銀行セクターのコストの高さに問題があるとみている。小口の貸付、預金が多く手間がかかること、信用情報が不十分で審査が保守的で人手もかかること、IT化の進展が不十分なことなどが課題となっている。

 <メモ>

 ソッカ総局長

 1988年 東ドイツ ライプチヒ経済大学卒

 1992年 同 博士課程卒

 1993年 カンボジア中央銀行 国際収支課

 1996~97年 現・政策研究大学院大学移行経済プログラム(当時は埼玉大学)

 1997年 カンボジア中央銀行 国際経済調査課長、以後経済・統計総局副総局長などを歴任

 2010年 業務総局総局長(Director General, Technical General Directorate)、今年から広報官も兼務している


NNA